5分ほど四谷方面に向かって歩くと、あちらこちらで見かける、国内外最大手の旅行代理店の看板が掲げられている近代的なビルが見える。



そしてその脇に、戦後間もなく建てられたという細い鉛筆のような汚いビルがある。



入社して三ヶ月になろうとしていた彼女は、左手のビルを恨めしそうに一瞥して、鉛筆ビルの地下フロアーへ通じる階段を降りて行った。