「そうですか…」

「何か心当たりがあるみてえだな?まあ、俺には関係ない話だがな」

院長とともに城門まで行く途中に女と子どもがいた。

俺はあまり気に止めなかったが、院長と根津は何か気になるようだ。

「どうした?こんな道端で?」

「あの…うちの娘が足が痛いと言っていまして…」

「なるほど」

院長は素早く子どもを抱き抱えた。

「おい。謙信の城には、救護室くらいあるんだろ?」

「まさか、部外者を中に!?城門の兵士になんて言われるか…」

院長のハチャメチャな行動に俺は困惑した。

「部外者もくそもねえ。俺の前にいる奴は全員俺の患者だからな」

「そんな…」

「お前は自分の範疇で考えすぎなんだよ。困ってる奴は助ける。その道理だけありゃ十分さ」

俺はその一言に自分の考える英雄の姿を見た気がした。

「分かりました。一緒に行きましょう」