彗星のごとく現れたのは、馬に乗った政宗だった。

男は背中を切り裂かれ、血飛沫を吹き出していた。

「ぐっ……」

男は膝をつき、地面に伏せる。

「政宗殿、戻ってくれていたのか!?」

「なあに、偶然だよ。さて、てめえは人質として価値がありそうにねえな」

政宗は男の背中側から刀を突き付ける。

「ふん……少し油断したよ。伊達政宗か……貴様、次会った時は覚えていろよ」

男は一瞬の内に、自分の影に溶け込むようにして消えた。

「あっ!!この野郎……逃げやがったな」

ギリギリと悔しそうに歯軋りしながら、政宗は刀を鞘に納める。

「政宗殿、偶然だが来てくれて助かった」

「まあな……で、そろそろ出るのかい?」

「ああ。いよいよ決戦だ」

謙信は背後にいる兵達に向け、高らかに叫ぶ。

「敵は強大だが来る敵は一人残らず、たたきふせろ!いざ……出陣!」