「謙信様、そろそろ軍を出す頃合いかと……」

「うむ……そうだな」

近臣からの進言に、城門近くで待機する本軍達を指揮する謙信は出陣の号令をかけようとしていた。

「甘い守備だな」

その瞬間、城門前に黒い影が舞い降りた。

たった一人のその男は、黒い布で顔を隠した忍者であった。

「敵か!?」

雄々しくも謙信を守ろうと家臣達が謙信を取り巻く。

「雑魚が。目障りだから、道を開けるんだな。用があるのは謙信だけだからな」

男は家臣など相手にせず、謙信にだけ視線を注いでいた。

しかし、謙信には見覚えのない男である。

「私になんの用だ?」

「貴様の大事な娘は私たちが預かっている。返して欲しければ、持っている宝玉を全て渡すんだな」

「なに?」