「はあ……はあ…」

一瞬のフラッシュバックだったが、根津は汗だくになっていた。

両手の平が汗まみれになっている。

「根津。大丈夫か?」

「……俺…」

根津には院長と出会った時の記憶しか残っていない。

初めての感覚に根津は呆然としていた。

「……根津、これを渡そう」

院長が手渡したのは拳に付ける手甲。

「これ……」

根津がそれを手に取ると、何か懐かしい手応えを感じた。

「頭で思い出せねえなら、体で思いだしな」

院長はそれだけ言って、再び治療に当たり始めた。

手元にある武器。

何やらわからない記憶。

「……死にそうになったら、ちゃんとちゃんと治療してくださいよ!!」

「わかってるよ。さっさといってこい。素人なんだから、ちまちまやってきな」

ガタン!

激しい音を立てて、診療所の戸を開き、根津は飛び出した。