「お前が猿飛佐助!?」

男だけではなく、周りの人達もどよめき始めた。

「佐助と言ったら、上杉の隠密じゃないか?」

「大変な奴を相手にしちまったな。あの侍は…」

周りの声を聞き、男はきまりが悪そうにしている。

男に詰め寄られていた人は俺をじっと見ている。

「ちっ!!」

男は文句をつけるのを止めて、人混みをかき分けて、去っていった。

「やれやれ。厄介な奴にからまれたみたいだな?」

「……あなたはお強いんですね。ここに来たのが初めてで土地勘もないもので」

男は俺を知らないらしい。

「そうなのか。あまりキョロキョロして歩かないようにな。今は少し浮かれているんだ。戦争に勝ったからな」

「なるほど。私は、根津甚八と言います。あなたは猿飛佐助でしたっけ?」

根津甚八を名乗る男は、すっと手を差し出してきた。

「……ああ。よろしく」

少し遅れて握手に応じた。