慶次は頭をガシガシとかきながら、空を見た。
 
「まあ、これで新しい敵ができちまったわけか。やってらんねえな」
 
慶次は大きくため息をついた。
 
昔の戦友が敵になるとは思ってもいなかっただろう。 

俺は慶次に過酷な現実を突き付けてしまったことを少し後悔した。
 
しかし、知らないよりはまだ良いはずだ。
 
覚悟ができるから。
 
「仕方ねえ。大将には俺から伝えといてやるよ」
 
「慶次……ありがとう」
 
「気にすんな」
 
背中を向けた慶次はどことなく淋しそうに見える。
 
かつての戦友を二人も失った。
 
それもそれぞれ違う形で。 

「じゃ、お前は町でもうろついてきな。少しは気分転換も大事だからな」
 
「ああ」
 
俺も背中を向け、町へと歩きだした。
 
町も戦局を聞いてか大いに賑わっている。
 
「こんなふうにしていられるのもいつまでだろうな……」