私は唖然とした。

「……明日って今日……」

怖いよ……
もう嫌だよ……

テンション低いまま階段を下りてリビングで母の料理を食べる。

「亜実?何かあったの?」

母に言えるはずが無い。
付き合っている事さえも言ってないのだから。
だから必死の作り笑顔で、

「ううん!ちょっとお腹痛いだけだから♪」

「そう……」

寂しげな顔をする母。
申し訳ない気持ちでいっぱいだった。
大切な身内に隠し事をするのは一番辛かった。

「ありがとね!気にかけてくれて♪」

せめて笑顔をふりまこうとした。
狂った愛情を持つ彼氏の恐怖を脱ぎ捨てて……

「じゃ、行ってくる!」

「行ってらっしゃい」

カバンを持ち、靴を履き……
普通の高校生の風景。
ドアを開け、すがすがしい外の空気を吸い込んで、いつも通る道に差し掛かる角を曲がった。

「亜実」

「!」

ビクッッ

即座に反応する私の心と体。
そう、悪魔の存在が目の前にあった。
今すぐにも逃げたかった。

無視して章汰のスグ横を素通りしようとしたけれど、やはり章汰に肩を掴まれた。

「なぁ、亜実?昨日返信してくれなかったよな??どうしたんだ?心配だったんだよ!?」

心配されるようなことはしていない。
てか心配されたくない。
そうだ!逃げる方法思い出した!

「ねぇ、昨日言ったじゃん」

ちょっと優しめに言う。

「え?」

久々に私が優しい口調で喋ったのに感動したのかとびっきりの笑顔をみせる悪魔。
けれど意味は理解していない。
それが余計ムカついて仕方が無かった。

「だからさ、他の男を好きになったとしたら好きになる理由を考えてって言ったの!」

だから昨日のように怒鳴り散らす私。
ビクッとする悪魔。

「亜実……?」

「考え付くまで私達、会わないようにしましょ!じゃ!!」

私はその場を早歩きで走り去って行った。