ある日、私は少し失敗をして階段に座って泣いていた時、一人の男子が話しかけてきた。

「亜実……大丈夫。先生も気にしてないって」

「……亮平君……」

「あんまし、自分を責めないでな」

私の男子友達の中で一番仲がいい、亮平君。

「ありがとぉ」

彼はそこまでチャラくはない、いたって普通の男子。明るくって優しい。
どこでもいそうだけど、どこにもいない特別な存在だった。
男子の中で彼にだけ、章汰について話していた。モチロン章汰の目が届かない場所で。

男子と話すとその男子は殴られる。
私はすごく慎重だったけど、亮平君は私を理解してくれようとしてくれる。
いつしか亮平君が好きになっていた。

けどやはり……私をずっと見ている章汰は私の思いに気付いてた。

今日の下校は一人でしたかったのに、章汰に呼び止められ、

「一緒に帰ろう。話があるんだ」

いつもと違う。殴る時のような口調だった。
あぁ……バレる。
私は章汰と少し距離を置いて歩いていた。

「なぁ?」

「なに」

そっけなくする私。
ただの強がりにしかみえない。

「他に好きな奴とかいないよな?」

ものすごく怖い顔が目の前に来る。

「は?」

冷たく小馬鹿にすると、

「いるのか!!?」

怒鳴りつける章汰。
涙なんてでなかった。何度コイツのせいで泣いてきたか。
ただ無表情の裏には憎しみしか溢れ出なかった。

「……ふたりは一緒って何回も誓ったじゃないか」

「……」

私は結局口を開かず目を合わせず。

「俺らはずっと一緒って決まってんだよ……?」

そんなの決まってない。
ただの、あくまでも自分の規則。

その時、私の何かがプチッと切れた。