ドン!!!

この大きな音でドアが壊れた。
目の前に章汰が腫れた右手を震えさせる。
もう、やだよ……

私はその場の床に座り込む。
それを見下ろす悪魔はクスクスと笑う。
何が楽しいかさっぱりわからない。
片手には、亮平君の血がべっとりついたサバイバルナイフ。
まさか……

「亮平く……!」

ふと、亮平君を見ると、

背中を、何回にもわたって刺されて血まみれで、床にたまっている。
気づくとツンと鉄くさい匂いがしていた。
首も何回も刺されている。
目を見開いて、口を少し開けて……そこから血が流れている。
そう。
もぉ亮平君は、
絶命していた。

私のために。
すべては私のせいで。

「愛してるよ。亜実……」

章汰は私を後ろに押し倒す。
トイレに後頭部を打ち付け、意識が朦朧とする。
影がスッと重なる。
目の前には章汰。薄気味悪い笑みを浮かべてる。

「やぁぁッ!いやぁッ」

抵抗するけどびくともしない。
細い体のくせして力はすごい章汰。

上から章汰のキスが唇に降ってきた。

「んぁッ」

苦しい……

「しょ……ふぁ…ッ」

息が吸えない。
とりあえず、息をしたいと思ったその時。

ザクッッ…

「ん゛ッッ!!!!」

とてつもない痛みと衝撃に襲われた。
そう、左胸にサバイバルナイフが刺された。
それと同時に体が痙攣する。

今度はいたるところにザク、ザクと何十回にも刺されてゆく。
そのたびに激痛が走る。

痛い…痛い……痛いよ!
章汰ぁ…!!

「……ッ!ぅあ゛ぁ……!!!」

わけの分からないうめき声をあげる私。
ピクピクとする体。
血まみれの体。
熱い……痛い……

……突然極度の寒気に襲われる。

「さ……ぃ…さむ…ぃ」

痛みは痺れになっていった。
ぴくっと体が動くたびに激痛が走る。

「ぅあ゛ッ?!」

息がまともにできない。

章汰はニコニコしていた。
その顔には私の返り血が……

これに耐えられなくなった私の体は、もう動かなくなった。
私の最期の視界には、私から流れる血だまりと、返り血を浴びた章汰の足……

ぼやける……


視界が暗くなる。
ふわっと体が軽くなった。