「亜実!!!!」

亮平君は突然私と章汰の間へ走った。

ザクッ……

「え?」

鈍い音がした直後に、

「ああぁああぁあ……!!!」

叫ぶ亮平君。思わず後ろを見ると、
背中を刺されて血だらけになり、ひざまずく亮平君に……
先が真っ赤にそまっているサバイバルナイフから滴り落ちる血。
ソレを持つ……

「ぃやぁあああああぁ!!!」

章汰。
亮平君の背中を見ると、白いカッターシャツがみるみると赤く、黒く染まっていた。
それは、頭がクラクラするぐらいの量だった。
そして同時に、

「うッ……」

吐き気も及ぼした。すぐに口を手で押さえる。
ふと章汰を見ると、さっきの最高の笑顔が、最凶に不気味な殺意のこもった笑みになっていた。

「お前が調子に乗るからだ……」

そして最高に優しい声はどこにもなかった。

「いや……いやだッ!!亮平君!亮平!!りょうへいぃ!!」

私は亮平君の忠告を無視したことにやっと後悔し始めた。
涙が止まらない。
ただがむしゃらに“りょうへい”と叫んだ。


……そうだ!警察……

私は一瞬のすきを見計らい、トイレに逃げ込んだ。

カギを閉めて、便座に座った。
でも落着けなかった。

警察……亮平君が……

今、起きた事態が把握しきれない。
混乱してきた。

マナーモードにし、ゆっくりと警察の電話番号と打った。

『もしもし。なにがありましたか』

「助けて。元彼に彼氏が刺されたの。私もいずれ……殺される」

極限に小さい声でしゃべる。
けれど、

「おい、亜実!!どこだ!!!」

来た……

「今、私は探されている……助けてぇ…住所は………です」

『わかりました。ただちに向かいます』

プツッ。