狂った愛情

「別にアンタと話すようなことはないよ」

怖い口調の章汰はもう怖くなかった。
だってもう、私には愛する人が守ってくれるから。

「いいよ。俺でるから。携帯」

私に手を出す亮平君。私はちょっと驚いた。
少しためらいながらも携帯を手渡した。
私の携帯を耳に当てる。

「もしもし。章汰」

『お前、俺の女に手ぇ出してんじゃねぇよ』

章汰がキレる寸前の声をしているのが丸聞こえだった。

「お前こそ、俺の女に手を出すな」

おおお、俺の女?!
亮平君…カッコいいよ……

『は?!亜実の彼氏は俺なんだけど。バカじゃねーの?」

「いやいや。たった今、俺が彼氏になったんだよ。」

携帯の向こうで舌打ちの音が聞こえた。

『ふざけんな!!俺と亜実はまだ付き合ってるんだ!別れてねぇんだよ!!』

キレた。
章汰がキレた。
私はため息をつきながらソファに座った。

「亜実は別れたがってるんだよ!もうすぐお前はストーカー罪になるぞ。元彼はもう用無しだっつーの」

キレかけ?の亮平君は章汰を挑発をするような言い方をする。

「亮平君……もぉやめよ…」

気づかない亮平君。
もう男同士の喧嘩になっていた。

怖い。
急に寒気と震えが来た。
頬に温かいものが次々と伝っていくのがわかった。

「亜実?どうした?!」

やっと気づいた亮平君。思わず私は彼を抱きしめた。
え?っていう顔になっている。

「お願い……もぉやめよ?」

「……」

亮平君は私のコトを考えて黙り込んだ。

「わかった。じゃぁ、代わる」

理解してくれた亮平君は携帯を私に差し出してくれた。

「ありがとう……グズッ」