それから10分が経ったその時。

携帯が鳴った。

目を合わせて、おそるおそる携帯を開くと、

着信:章汰

私は恐怖のあまり、亮平君を見た。

「でてみて」

「うん」

無音のリビングに、押した携帯の通話ボタンの機械音がやけに大きく感じた。

「もしもし……」

震える声を抑えれなかった。

『亜実~!どうして俺じゃなくてそこにいる奴、入れちゃったぁ~?』

携帯越しの声は亮平にも聞こえている。

「あのさ、何が言いたいの……」

ちょっと強気に言おうとしたけれど、根が弱い私にはとうてい無理だった。

『彼氏以外の奴入れていいと思ってんのぉ?亜実ぃ。何かされちゃうよぉ??』

イラッとした。

「亮平君はそうゆうことしないから!!あんたとおなじにしないで!!」

私は電話を切った。
亮平君は、

「落ち着いて……亜実」

私の肩に手を置き、ソファに座らせた。

「亮平君の悪口言われてッッ……うぇッ落ち着け……グスッ訳ないじゃんッッ」

私は極度の緊張と恐怖と怒りが同時に襲いかかってきたのか、心がコントロール出来ずに泣き叫ぶコトしかできなかった。

「亜実……ッ」

グスグス泣いている私を優しく抱きしめる亮平君。

「うぇぇ……ン……グズッ」

その亮平君の温かい腕でただ泣き続けた。



きっと……私のコト面倒くさいと思ってるはずだよね。
そう思って泣くのをやめて、彼の腕が離れるのを待った。
だけど、彼は抱きしめてくれるのをやめなかった。

「亮平君……もぉ平気だよ」

「本当に?」

「うん」

私から彼のぬくもりがそっと離れた。

「ありがとね……」

「いや、落ち着いた?」

「うん。落ち着けたよ」

そう言うと、亮平君は優しい笑みを浮かべた。