今日は帰りのSTが早かった。


私たちのクラスが一番に終わった。
ラッキー!と思いながら章汰のクラスの廊下を通った時、
席についてST中の章汰と目が合った。
そのとき私をすがるような目でみつめたのち、舌打ちをしたようにみえた。
なんだか私はその場から動けない章汰を見て勝ち誇った気持ちになった。

できるだけ早歩きで家に帰った。





ガチャ。

「……ただいま」

と、言っても家には親はいないけどね。
静かにドアを閉める。
靴を脱いで二階の階段を上ろうとしたとき、

~♪~♪
二階にある携帯がメロディーを奏で始めた。
私は階段を駆け上がり、自分の部屋に入って携帯を触った。

着信:亮平君

「!!」

私はドキッとした。
実は先日、章汰のコトで相談にのってもらったとき、

『亜実は大変なんだな。じゃぁ、いつでも連絡取れるようにさ、連絡先交換しない?』

『うん!』

って感じで連絡先を交換したの!

嬉しくって通話ボタンを軽快に押した。

「もしもしッ」

『あ、亜実?』

優しい声の主。亮平君。声を聞くたび嬉しくって愛おしくってドキドキする。

「うん……どうしたの?」

『今日さ、章汰の友達が言ってたんだけど……』

「……!!」

ビクッとした。その“章汰”の一言で恐怖と怒りが一気に湧き上がってきた。

『今日、亜実の家に行くらしい……』

固まった。
声がまともに出ない。

『俺が守る。すぐに亜実ん家行くから』

「た……すけて……親は、夜まで帰ってこないの……」

『わかった』

プツッ。
ツー……ツー……ツー
携帯の機械音が部屋を奏でる。
手が震えて携帯をベッドの上に落とした。