「過去から、抜け出せないほどに」

 どうあがこうとも変えられない事柄に執着すれば、精神はすり減り壊れていく。それでも変えようともがき苦しみ、自ら選択肢を断ち凄惨な最期を遂げる。

 もっと早くに出会っていたならば、どうにか出来たのだろうか。何故、出会えなかったのか。こうなる事は必然なのか。

 二人の睨み合いに、ベリルは変えられない流れなのかと奥歯を噛みしめる。死から逃げもせず、避ける事も考えず向かっていく二人に疑問を抱かずにはいられない。

 それはあたかも、彼らの意思とは関係なく遺伝子が争い合っているようにベリルの目には映った。

「貴様なんかには渡さない」

 父さんの隣を──フォージュリの口から紡がれた言葉に、ジーンもベリルも目を見開く。

「おまえ、どっちなの?」

 殺したいんじゃなかったのかいとジーンは呆れて目を据わらせた。