「知らなかっただろ? 自分のクローンが造られていたことを」

 下品な笑みを浮かべ、フォージュリはさらに距離を詰める。

「あんたがいた施設。その別棟の地下に、俺はいたのさ」

 フォージュリはそれまで貼り付けていた笑みから、毒々しい何かを含んだ視線をベリルに向けた。

「まさか、忘れた訳じゃあないよな? 自分がキメラだってこと」

 ビクリと体が強ばる。

 ──ヨーロッパの中ほどにある小国、アルカヴァリュシア・ルセタは近年まで他国より秀でた科学技術を有していた。

 数十年前、自国が誇る科学力により赦されざる研究を重ねていた。

「実験No.6666(フォーシクス)だよな?」

 決して忘れることの出来ない真実──それをいま他人の口から聞かされ、懐かしさと自責の念と畏れとが混ざり合う複雑な感情に足元から体温が奪われていく。