「そんなの、僕が許さない。僕の時間まであいつに奪われるってことじゃないか」

 折角、こうして父さんと一緒にいられるのに。失敗作なんか、すぐに殺せばいいんだ。

「お前がそのつもりなら、私はお前とはいられない」

 その言葉にジーンは目を見開いた。

「それ、本気で言ってるの?」

「私に従えないのなら、そうする他はない」

 途端にジーンは涙をためて体を震わせる。

「嫌だ。父さんと離れるなんて嫌だよ」

「ならば、私の指示には従う事だ」

「きくから。言うこときくから。僕を、一人にしないで」

 ベリルは泣きながらすがりつくジーンを一瞥し、荒野に目を配る。

 フォージュリを殺す事も、殺さない事も正しく、そして間違っている。どちらの選択が正しいのかは解らない。ただ、時間が欲しかった。

 明日の朝、車を数時間走らせればバリングラに到着する。

 ずっと考えてきた答えは──未だ出てくる事はなかった。