──あの時の、彼の言葉は馬鹿げているとベリルは今もそう考えている。

 神の存在にではなく、己が神に創られたという部分にだ。ベリルはそこまで自分を確たるものであるとは思えなかった。

 そして、許される存在でもない。

 後(のち)の世には人工生命体など、何らおかしくもない時代になっているかもしれない。けれども、現在ではそうはいかない。

 狂信的な信仰は、本当の救いとなっているのだろうか。多くは、自滅を辿っているように思われてならない。

 世界の隅々を知っている訳ではないが、そのほとんどが凄惨な結末を迎えているのを見てきた。

「ジーン」

「何?」

「解ったなら、私を守る必要は無い」

「守るよ」

 目を眇めたベリルにジーンは感情のない目を向ける。

「そうやって、あいつを殺さずにいるのはどうだろうね。あいつが死ぬまで逃げ続けるつもり?」

 そんなの冗談じゃないよ。ジーンは笑みを見せつつ、その瞳に怒りを灯していた。