──深夜、練炭と薪をくべて星空を見上げたベリルは、背後から放たれる強い意識に素早く振り返る。

「勘が良いね」

 振りかざしていたナイフを素早くベリルの腕に滑らせた。

 油断をしていた訳ではなかったが、ジーンの思考は読み取りづらく、判断が鈍り避けきれなかった。

「ジーン」

 押さえた左腕から鮮血が流れる。やはり、この方法を選んだか。

「あいつの相手は僕がするから。父さんは大人しくしててよ」

 ジーンはナイフの切っ先をベリルに向け、滴る血を恍惚と見つめた。

「どうせ邪魔するんでしょ」

 だから、怪我をしてもらうよ。縛るだけじゃあ、すぐに抜け出すでしょ。

「僕があいつを殺そうとすれば、父さんは必ず邪魔をする。だから、少しの間だけ動けないようにするよ」

 足にちょっと傷を付けるだけだから大丈夫だよ。父さんは医師免許を持ってるよね。