ジーンの目には、ベリルの姿がとても美しく鮮烈に映った。施設を出れば退屈な日々から解放され、刺激的な生活が待っているのだと心が躍った。
「そうか」
今度は、苦々しく応える。
顔も知らない男と闘い、初めて人を刺し、初めて人の命を奪った瞬間を、ジーンは見ていた。
あのときのことは、今でもはっきりと覚えている。
生きた肉を刺した感覚と、脈動する皮膚。手に伝い落ちる血液の生暖かさ──それら全てが一瞬で手から全身へと伝わり、込み上がる吐き気を必死に抑えて震える体で懸命にその場から遠ざかった。
彼らはその場面を、私とはまったく異なる感情を抱いて見ていたのか。
それが事実であるならば、ジーンやフォージュリが命を奪う事に躊躇いがないのは、私にも原因の一端があるということになる。
皮肉というには、あまりにもナンセンスだ。
相手を殺したかった訳じゃない。けれども、私の「家族」を死に至らしめた者に報いをと少しも考えなかった訳ではない。
その感情が画面越しに彼らに伝わっていたのだとすれば、私の罪は大きい。