──「それ以上、何を望むの? 俺たちには、何も望めないのに。何もかもを持っていて、何もかもを与えられたくせに」──
「違う!」
声を荒げて目を覚ましたベリルは額の汗を拭った。
普段はあまり夢を見ないというのに、ジーンやフォージュリが現れた影響だろうか。湿った襟元に眉を寄せる。
まだ薄暗い風景に目を眇め、溜息を吐いて顔を伏せる。
虫たちのささやき──ベリルの知らない所で繰り広げられていた生命の探求。
それを、ベルハース教授は知っていたのだろうか。知っていたならば、それを止めてくれはしなかったのだろうか。
彼もまた、国に翻弄された科学者の一人に過ぎない。それを解っていても、そう思わずにはいられない。



