されど、クローンまでは予想していなかった。襲撃のあと施設を全て回ったが、違和感のある場所は無かったように思う。
そこでベリルは気が付いた。違和感が無かったのは、当然かもしれない。
ジーンは言っていた。人工生命体の研究が着手されたと同時に、クローン計画はすでに持ち上がっていた。
計画に必要な人材と施設はベリルが誕生した時点で開設され、一歳となった頃にそれが実行された。
ベリルが五歳のときにフォージュリが産まれ、次の年にはジーンが誕生した。一体、何体のクローンが造られたのだろうか。
ベリルが物心つく前からすでに実行されていた計画──初めからそこにあるものに、誰が違和感など覚えるだろうか。
ベリルは科学者でもなければ国の関係者でもない。実験で生まれた生物に、全てを語る訳も無い。
今更に自分が何者なのかを思い知らされ、突きつけられてベリルは薄笑いを浮かべた。



