森の三分の一以上が国の所有地である事には、なんら違和感はない。けれど、この施設のためだけに訓練施設が建てられたことは、限られた関係者以外は知るよしもない事だ。

 ましてや、そのために訓練施設がただの飾りであったことも、後(のち)の悲劇を生んだ要因ともなった。

 それでも敷地内はおろか、立ち入り禁止区域の手前には監視カメラも設置されている。それなのに何故、誰もギリギリまで侵入に気付かなかったのだろう。

 内通者がいたと考えるのが普通だろう。しかし、それを確かめる術はもう無い。

 あの襲撃で、唯一の成功例の姿は確認出来ずデータも全て灰となったため、国は施設を全て取り壊し、跡地には新しい木が植樹されて今ではただの森になっている。

 残されたごくわずかなデータだけが機密情報として国の管理するコンピュータの中に埋もれている。