──ベリルは荷物を積み終わると運転席に乗り込む。ジーンは当然のように助手席に腰掛け、シートベルトを締めた。

「なに?」

 いぶかしげに見ているベリルに眉を寄せる。

 解ってはいた事だが長年、共にいるように振る舞われるのもおかしな気分ではある。まあいいかと溜め息を吐き、自分もシートベルトを絞めた。

 ベリルはエンジンをかけ目的地までの道すがら、幼き頃の記憶を思い起こす。

 薄緑の高い塀に囲まれた薄い象牙色の建物──隠れるように、それは森の中にあった。

 軍の訓練施設に併設された、国家機密の遺伝子研究施設は、厳重なセキュリティのもとで運営されていた。

 科学技術を輸出しているアルカヴァリュシア・ルセタには、他にもそういった施設があるため、さして気にも留められることはない。

 しかし、この施設だけは異質であると気付いた者は誰一人、いなかっただろう。