「俺が、失敗作?」

 そんな訳があるものか。

 しかし、ジーンを初めて見た事でフォージュリは己の存在がさらに揺らいでいた。

 あいつもクローンなのに、どうして俺たちと一緒じゃなかった? あいつだけ特別だったのか? それは何故だ。

「ジーン……」

 そして、何の警戒も示さずにいたベリルに眉を寄せる。

 隣にクローンがいるのに、あいつはどうして、あんなにも落ち着いていられるんだ。

「俺は偽物じゃない。失敗はあいつだ」

 たどり着かない答えにフォージュリは頭を抱えて苦しむ。

 夕闇が迫り、住民は我が家へと戻っていく──人影が消えてひっそりとした公園は、さらなる暗闇を呼ぶように、どこからともなく夜の鳥の鳴き声が響き渡った。

 しかし、鳥だけでなく虫たちの声も突然、一斉に止まる。

「──殺してやる」

 闇に染まっていく空間を見つめ、フォージュリの碧い瞳が輝いた。




-----
正鵠《せいこく》を射る:物事の急所を正確につく。正鵠を得る。「―射た指摘」
正鵠:《慣用読みで「せいこう」とも》
   1 弓の的の中心にある黒点。
   1 物事の急所・要点。