「人を殺めた事があるからと、躊躇いを無くせるはずもない」

「そうじゃないよね。自分一人だけが生き残ってしまったと思っていたから、僕らが生きていて嬉しかったんでしょ」

 正鵠(せいこく)を射られて眉を寄せる。

「だから、殺したくない」

 ジーンの声に視線を合わせた。その瞳は、ベリルの感情を無意味なものだと嗤っている。

「そんなの、あいつに伝わる訳もないのに」

「解っている」

 それでも、見い出せるものがあるかもしれない。諦めが悪いのは昔からだ。

「もう、僕の邪魔しちゃ、だめだよ」

 ベリルの耳元で抑揚のない声が響く。

「当たっちゃったら嫌だからね」

 ジーンは本気だろう。

 それをさせないためにも、止める方法を見つけ出さなければならない。