いや、ジーンのような人間は、多くはないが今までも見てきている。されど、出会ってきた誰よりもジーンに対する強い違和感は拭えない。

 普通に振る舞っているように見えて、意識だけでは補えない感情の欠落が見え隠れしている。

「まあいいや。父さんのしたいようにすればいいよ」

 肩をすくめてリビングに戻っていく。ふと、振り返り、

「お腹空いた。何か食べたい」

 子どものようにねだるジーンに呆れつつ、キッチンに向かった。フライパンを手にし、去り際のフォージュリの表情を思い起こす。

 あれは憎悪とは異なる──妬みにも似た目だった。