無名から一気に有名人となったベリルは、自分を中心とするネットワークを構築し、なんとか上手く動いている。
円滑に仕事をこなすためベリル自身が作成したシステムだが、多くの人員や仲間がいなければ成し得なかったものだ。
──紅茶をひと口味わい、ノートパソコンを閉じる。これからの数日間、何をしようかと思考をめぐらせた。
オーストラリアはあらかた回ったが、それでもまだまだ新しい発見がある。
「ん」
そのとき、バックポケットのスマートフォンが振動で着信を伝えた。
登録していない番号に眉を寄せる。仲介の無い依頼なのか。いぶかしげに思いつつも、画面に表れたアイコンをスライドする。
<よう>
「誰だ」
記憶には無い男の声。二十代だろうか、まだ若い印象を持つ。