「はい」

 差し出されたムースを受け取り、食べ始めたベリルをジーンはじっと見つめる。

「父さんて、綺麗だね」

 スプーンを噛み、嬉しそうに発した。

 時折、言われる事だがベリル自身にとっては、あまりピンとこない。自分の容姿について気にした事も、確認した事も無い。

 はっきり言えば、自分についてはまるで興味がない。とはいえ、仲間や友人がしきりに言うので、自覚くらいはある。

「クローンって、みんな同じ顔だと思ってた」

 ジーンの言葉にベリルはさして驚きもせずムースを口に運んだ。

「性格が形成されるまでは差異はない。しかし、環境や性格が異なるにつれ変化していく」

 家族や友人が見分けが付くのは、必ず差異があるからだ。