「いま、同じこと考えたよね」

 嬉しそうにベリルを見つめるジーンから目を反らす。

「カナリアの一代雑種。Mule(ミュール)のこと」

 さえずりの美しいアトリ科の野鳥のオスと、カナリアのメスとの交雑種──生殖能力を欠くので基本的に一代限りだ。日本ではハイブリッドと紹介される事が多い。

「もっと面白いのが、クローンのクローンを作ろうとしたけれど、どれも成功しなかった」

 細胞の核においても、一代限りって訳さ。

「もっとも、クローンの成功例が僕だけっていうのも不思議だけどね」

「何を持ってしての成功と見なしたのか」

「確かに。クローンだけでくくるなら、あいつ(フォージュリ)や、他の奴らだって成功といってもおかしくないよね」

 でも、彼らは僕以外を失敗とした。そこでふと、ジーンは何かを思い出す。