──陽が傾き、ベリルは夕飯の準備を始めた。不死になってから食欲というものは消え失せたが、ジーンに作らない訳にはいかない。
どのみち、まだ不死だと語れない今は食べる事で気付かれることはない。
もちろん食べる必要がなくとも、味わう楽しみは忘れてはいない。酒もそこそこたしなむし、料理は良い気分転換にもなる。
「何を作ってくれるの?」
ジーンは子どものように目を輝かせ、後ろからベリルの手元を覗く。ベリルはふと、ジーンは身長が自分よりも少し高いのだと気がついた。
「父さんは、アジア人の特徴が身長に出たんだね」
慣れない呼ばれ方に、やはり苦笑いが浮かぶのは否めない。
「まだ、僕を信用してないんだろ?」
おもむろな問いかけにベリルの手が止まる。
「それでも背後にいさせてくれるっていうのは、余裕から?」
ベリルはジーンを一瞥し、調理を再開した。
「攻撃するつもりなら、とっくにやっている」
「まあね」
ジーンはグラスを二つ、食器棚から取り出し夕食の手伝いを始める。