失敗作──その言葉は、ベリルの脳裏に一つの部屋を再び思い浮かばせた。

 幼少の頃、一度だけ入った部屋は薄暗く、並べられた幾つもの水槽に収められている異形ともいえるその姿を、小さなベリルは静かに見つめていた。

 己が生まれる前に何が行われていたのかを、目の前の水槽がありありと突きつけていた。

 その中に一際、成長していた少年の姿にベリルは立ち止まる。その瞳は、ジーンと同じアクアマリンだった。

「同じ細胞を使っているからって、全てのクローンが発現する訳じゃないからね。僕だけが成功したってわけ」

「発現?」

 聞き返しながら、ジーンが座っているソファの右斜めにある一人がけソファに腰掛けた。

「全体的な能力のことでしょ」

 グラスを傾けてベリルを指さす。