「僕は、あなたを殺そうだなんて思っていないよ。だって、僕を生み出したオリジナルなんだからね」

 そう語った瞳は、どことなく空々しくベリルには感じられた。

 gene(ジーン)──それは、遺伝子という意味を持つ。髪の色も瞳の色も異なるけれど、やはり、どこかベリルと似ている。

 このジーンという青年も、同じく戦いのなかにいたのだろうか。彼らにとって、生きやすい世界がベリルと同じであるとは、なんとも皮肉だ。

 まずはセキュリティを戻さなければと、ベリルは戸を開けたまま溜息交じりにキッチンに向かった。
 ジーンはその背中を見つめて、開かれたガラス戸からリビングに滑り込む。

 振り返り、後ろをついてきたジーンを見やると、彼はまるで仔犬のように人なつこい笑顔をベリルに浮かべた。