「殺してやる」

 優位に立っている喜びなのか、フォージュリの目は歓喜に満ち、常にぶつぶつと何かをつぶやいて口元が卑しく歪んでいる。

「フォージュリ──」

 ベリルは目を細めた。

 彼の精神が壊れかけている。もう、私の声は聞こえないのかもしれない。闘うしか道はないのか。

 そのとき、フォージュリの足下に鈍い音が響いた。地面の土がその衝撃で小さく舞う。

「なんだ?」

 フォージュリは辺りを見回すが誰の姿も見えない。一歩、また近づくと今度は靴をかすめた。

「仲間か?」

 ベリルは頭を横に振る。

 自分の事を知っているのは、カイルという元傭兵の師匠だけだが、彼にも今の現状は伝えていない。

「チッ」

 フォージュリは喉の奥で舌打ちをすると、素早くその場をあとにした。

 追いかけようと思ったが、牽制した相手が気に掛かり立ち止まる。