そのまま細胞の研究が続けられる予定であったが、ベリルの頭脳はそれ以外も求められる事となる。
希望するほぼ全てを与えられる代わりに、広い世界に足を踏み出す事は許されない。
ディスプレイに映される世界に、どれほど胸を焦がしても手を伸ばしても、触れる事は叶わない。
それでも、ベリルは誰かを傷つけてまで自由を得るつもりは無かった。
己の存在が赦されないものであることは充分に理解していたし、ベルハース教授たちは無骨ながらも自分を愛してくれていると解っていたからだ。
彼らを裏切ってまで、手にする自由などベリルにはなかった。



