「ハ、余裕じゃないか」

 ゆくりなく姿を現したベリルに、フォージュリは警戒しつつも口の端を吊り上げた。

「そう思うか」

 よく見ると、微かに手が震えている。それが、なんの感情を表しているのかフォージュリは図りかねた。

「お前を偽物だという者は、誰一人いないというのに──。それでも殺し合うのか」

「貴様がいる限り、俺は偽物なんだよ。終らせるんだ」

 容赦なく射抜くエメラルドの瞳に体はすくみ、紡ぐ言葉が震えた。ひしひしと伝わる力の差は、フォージュリを絶望へと突き落とす。

 俺は──勝てないのか?

「そんな、はずはない」

 フォージュリは支配する負の感情から抜け出そうと頭を振った。ベリルを睨み付け、奥歯をガリリと噛みしめる。