ベリルは、手にしている小さなナイフを見下ろした。

 ベルトに隠していたものだ。他の武器は全て奪われたが、これだけはフォージュリも見つけられなかった。

 近づいてくる気配に表情を険しくする。

 ほんの少し、対峙しただけだがベリルはそれで充分に理解した。奴(フォージュリ)に手加減は通用しない。

 手加減の出来ない相手──それは、確実にフォージュリは死ぬという事だ。それに、これ程ほど躊躇うのはやはり、過去の重圧からなのだろうか。

 全てが失せたと思っていた。けれど、生き残りがいた。どんな相手だろうと、それはベリルにとって嬉しい事である。