──目を覚ましたベリルは、ゆっくりと今の体勢を確認する。

 両手は後ろ手に手錠をかけられているようだ。足は拘束されていない。装備していた武器もほとんど奪われている。

 首に何か巻き付けられている。重たく冷たい感覚──これは、チェーンか。

「おはよう」

 フォージュリの声に目を開く。

 微かに鼻につく鉄の臭いと壁の端に積まれている鉄骨、視界に映る天井クレーンに、ここは古い溶接工場の中だと理解した。

 頭を少し動かすと、フォージュリはパイプイスの背を前にして相変わらずのにやけた顔をベリルに向けている。

 フォージュリの側には、天井クレーンを操作する押しボタンスイッチが吊り下げられている。大きなものを運ぶための天井に吊されたクレーンだ。

 建物内には二つ設置されていて、その片方がいまベリルの真上にある。