太郎は走っていた。
夜の道をひたすら走っていた。

月明かり、ではなく、街灯で照らされた道をひたすら走っていた。

それは、レンタルビデオを返すためである。

―延滞金をとられるまであと、10分!!

太郎は今日大きな過ちを犯したのだ。
ビデオを借りていたことを忘れたという。

1分、いや1秒でも遅れたら金欠貧乏太郎にとっては命とりだ。

だから、走る。太郎は走る。走って走って走りまくった。