「ママー。かえるの?」
「うん。帰ろ。カバン取っておいで。」
「はーい。」
乃亜が鞄を取りに行って、3人で幼稚園を後にした。
「母ちゃん。」
「ん?」
「悪い。乃亜と先帰ってて。」
「え?何急に。」
「菜緒んとこ行ってくるわ。」
「そう。わかった。」
「乃亜、俺ちょっと行くとこあるから、母ちゃんと先帰ってて。」
今日は授業参観もあるし、乃亜も一緒に帰ってくるから病院は行かないつもりだったけど、何か急に行きたくなった。
もちろん乃亜にはお姉ちゃんとこに行くなんて言えないけどさ。
ガラッ。
病院に着いて、まっすぐに菜緒のいる病室に向かう。
菜緒のおばあちゃんはもう来たみたいで、花が変わっていた。
だけど、それ以外は何も変わっていない。
いつものこと…
「菜緒。」
「……」
何度呼んでも返事は来ない。
これもいつものこと…

