車が走ってきていたのを菜緒がわかっていたのか、わかっていなかったのかはわからない。
菜緒の不注意ではあると思う。
そして、菜緒をはねた車。
高速道路でもないのに、かなりのスピードを出していた。
その車も悪い。
だけど、俺の頭の中にはそんなことは正直出てこなかった。
事故から何日経っても、俺の中には不注意だった菜緒を責める気持ちも、猛スピードを出したあの車の運転手を恨む気力もなかった。
ただ、後悔だけ。
後悔と涙しか出てこなかった。
どうして…
どうしてあの時、嬉しそうに走って来た菜緒を止めて、俺が菜緒のところに行かなかったんだろう。
これだけだった。
俺がはねられてれば…
これしか考えられなかった。

