「…京平…」



後ろにいた慎吾が俺の肩に手を置いた。



「菜緒…」



もうこの名前を、菜緒に呼びかけることはないのかな。



俺は涙を拭って、菜緒にどうしても伝えたいことを言った。



「菜緒…菜緒……ごめんな…」



そう言って、菜緒から離れた。



離れたっていうより、慎吾に支えられて。



たぶん慎吾がいなかったら、俺はずっとここを動かなかったかもしれない。



菜緒がいなくなる。



菜緒がいなくなる場所に向かって、運ばれ始めた。



菜緒…




菜緒…







菜緒……