「ちゃんと…ちゃんと氷野くんは彼女のこと想ってた…」
「……」
「想ってなかったら、こんなに悲しまないよ…」
「……」
「1人で抱え込まないで…氷野くんは1人じゃないから…」
不思議だった。
池内の言うことを、俺は何も言わずにただ聞いていた。
でも、なぜかわからないけどその言葉と、池内の温もりを感じて、涙が出た。
菜緒が死んでから、初めて泣いた。
女の前でダチの前でだせぇけど、1度出た涙は止まらなくて、しばらく泣いていた。
その間中ずっと、池内は俺を抱きしめてくれていた。
慎吾はただ黙って、俺の隣に座ってくれていた。

