あのキャラクターは、菜緒が好きなものだった。
だけど俺は、すぐにそれに気づかなかった。
何も思わずに、あのキャラクターを見てた。
鈴木の「あたしあのキャラクター好きなんだよね。」を聞いて、思い出した。
きっと中3のあの頃だったら違う。
あの頃だったら、見た瞬間思ったはず。
だけど3年経った今、すぐに出てこなかった。
もちろんいくら菜緒が好きなキャラクターって言っても、毎日毎日あのキャラクターが好きだって言ってたわけじゃないし、俺にそれを言って来たのも1回や2回。
だけど、俺は確実に今忘れてた。
…最低だ。
気付かない内に、少しずつ記憶が薄れてる。
菜緒が記憶になってる。
菜緒が過去になってる。
ガタン。
屋上のドアがいきなり開いた。

