三人は言葉を失い、何も喋らなかった。
沈黙を壊したのは私。
「ごめんねっ私記憶がなくて」
「……え」
茶髪男が私の言葉に反応する。
(普通驚くよね)
「俺はハル、塚本 春樹」
茶髪男は親切にも私に名前を教えてくれた。
「…俺は宮沢 陸哉、空にはリクって呼ばれてた」
金髪男は切なそうに言った。
「…ッ私は井上 茜、茜って呼ばれてた」
栗色女は泣きながら言う。
(ダメだ思い出せない)
三人は私と仲が良くて、陸と茜は付き合っていた。
…ハルは?
「空と春樹は付き合ってたよ」
陸が私に言う。
(…私と?)
私はハルを見る。
私と視線が合ったハルは、じっと私を見つめた。
真っすぐな眼差し。
右耳のピアスが光る。
どこか見たことがあった。
(…あ、私の耳にもある)
きっとお揃いで買った物だろう。私たちは付き合っていたのだから、そんなことは当たり前だ。
「…ホントに忘れちゃったの?」
茜が私に聞く。私は頷くしか出来なかった。
「あのさ…私が何で怪我したか知らない?」
私が聞くと、ハルと陸が驚いていた。…茜は首を横に振ったのに。
おかしかった。二人は知っていると確信した。
「…そっか」
私は二人の怪しい行動を見ていないことにした。
「ごめん…私ハルと話がしたい」
私は言った。茜と陸はまさかのことに驚きつつも、部屋を出て行った。
