そのとき余鈴が鳴った。


わっと坂田君の席を取り囲んでいた女の子たちがそれぞれ自分の席、自分のクラスに戻って行った。


私もやっと座れるようになった自分の席に帰った。


ふぅ、と一息ついたその時。

「…斉藤…」


いきなり自分の名前を少し低くて透き通った声で呟かれ、

私は真っ赤になってしまう。


「斉藤…ごめん」

「え?なっ、なっ、なっ何が…デスカ?」


最後のほう少し声が裏返ったけど…。


「席、座れなくて。ホント悪い」


さっそくだけどなんでもてるか分かったような気もする。


私みたいな人にもきちんと声かけてくれるんだから。



「大丈夫…!」



少し笑って答えると、「そっか、じゃいいか」とごそごそと机から本を取り出し、

読み始めた。



…マイペースだなあ…




ちょっとだけ笑ってしまった。


坂田君は少しだけ私を見ると、また何事もなかったかのように本に視線を戻した。