~4月~


春休みの間に母と妹は、

義父の元へ引越しをした。

アタシはヨシの家に残ることになり、

転校もせずに済んだ。

アタシの新しい実家は、

電車で20分程の所に在る。


「いつでも帰って来なさい。
紗那ちゃんの部屋も用意してあるからね」


義父からの優しい言葉に、


「うん。ありがとう、
お父さん」


と、自然に答えていた。


{少しずつゆっくりと…}


この言葉を聞いてから随分待たせてしまったけれど、

「お父さん」と呼んだこの時の父の笑顔は、

一生忘れることはないだろう。