生きる理由は何ですか?

「結構、ショックですよね…」

いきなりぽつりと言うものだから一瞬聞き逃しそうになったが長沢さんの表情は苦笑気味でなんだか心が痛かった。

「そうですね、長沢さんはこれからどうするんですか?」

「私は、まだ分かりません。伊藤さんは?」

逆に質問され僕は悩んだ後分かりませんと首を振った。
窓越しに外を見れば車も少なく人通りもない。
それがより僕らに現実としてのしかかり二人して溜息を吐いてしまった。
きっと若ければ次もすぐ見付かるとでも思われたのか、こうもあっさりクビだなんて理不尽だと拳を握る。

「伊藤さんっていくつですか?二十歳位?」

「今年二十一になりました」

何故?と問うように見ると長沢さんは若いね、と笑った。
なんだかそれにむかついて口を開きかけたが次の言葉にさえぎられてしまい言えなくなる。

「私と会社を興しませんか?」

思わずぽかんとしてしまった。
いきなり何かと思えば会社を興すだなんて。 冗談だろう。

「なんですかいきなり。無理ですよ」

「どうして?」

「どうしてって、だってゼロからのスタートだなんて不安過ぎる。僕は親を養わなきゃいけないし不安定な職には就けない」

思わず強めな口調になってしまったが仕方がない。
本当にいきなり過ぎる。
それに何よりも僕には経験があまりないのだ。
今の仕事が初めてだった。

「大丈夫ですよ。私がリードしますから」

「そうは言うけど長沢さんだって若いでしょ?その自信は何処から来てるんですか」

テーブルに肘をついては手の平に顎を乗せぶっきらぼうな口調で如何にもな態度を出す。
そんな僕の態度も気にはせずに長沢さんは笑みを浮かべ一枚の名刺を差し出してきた。

「…芸能プロダクション、グリーンオフィス?芸能!?」

差し出された名刺には確かに芸能プロダクションと記載されていた。