いつまでも夜道に居ると本物の変態に会うかもしれないから、と言って家に向かう私と男。

「偽物の変態が居るの?」と聞かれたけど無視した。

二人並んで夜道を歩いているとなんか男が気になった。

男は先刻の私の発言によほどショックを受けたのか表情はとても暗い。

なんだか罪悪感を感じてしまう。

そりゃ願い事忘れたのは私だけど、あんな次々と非現実的な事を見せられたら誰だって1分前の事を忘れるだろう。

そんな私の気持ちを無視して男が聞いた。


「あのさ…ほんっとに思い出せない?」

困っている表情とは裏腹に声のトーンは低く、少し怒ってる。と思う。

確かに私もせっかく願いを叶えに来たのに願い事を忘れましたーなんて


うわ、なんて酷い人なんだろ私。


「うん…ごめんね?一生懸命思い出してるんだけど!

あ、願い事を思い出すって事を願えばいいと思わない?」

「それは駄目」

即答された。

「流れ星の願い事は一つだけです。
貴女だって知ってるでしょ?」

「…うん」

そうだよ。だから迷って結局一つに


一つに


ひとつ…



「ああぁ!」

「わっ!」

「惜しかった!もう少しだった!もう少しで思い出してた!」

「何ぃ!?」


何を思ったのか男は私の頭を掴んだ。

次に勢いよく前後に降った。

「頑張って下さい!もう少し巡って下さい!」

「いだだだだだ!」

訳の分からない事を言いながら男は必死に私の頭を降り続ける。

痛い!ハンパなく痛い!
首ちぎれる!
脳が混ざる!

「はなっ…離せっ!」

耐えられず叫ぶが、男は手を離さない。

しかも

「いや…あともう少し」

「やめんか!この鬼畜野郎!」


しぶしぶとだがやっと男が手を離してくれた。

「き、気持ち悪い…」

頭の奥が重い何かを入れているような圧迫感。

そしてぐるぐると歪んだ空間に居る気分がさらに気持ち悪くする。

その空間の中に男が現れた。

期待に満ちた顔でキラキラしてる。

「どうですか?何か思い出しました!?」

「何そのいい仕事したって顔。すっごく気に障る」


まだ歪んだ空間の中で足がおぼつかずフラフラしていたら急に男が私の腕を掴んだ。


…何?まさか怒って暴力とか?

ちょっとした不安が過ぎり何が起こるかと身構えてたら。