『陽菜~どうしたんだ?俺の顔に何かついてるのか?』

『えっ!ううん‥』

少し頬を赤らめながら陽菜は下を向いた。そして手をモジモジさせ、体をクネクネ動かしている。「これは俺を誘っているのか?」大抵の男はここでそう思い、目の前の女をベッドに倒す。

でも、俺はそんな事をしない。今までだって我慢してきたんだ。絶えろ俺!絶えるんだ!!

口の中に溜まった唾液をグッと飲んだ。


『俺に話したいことあるんだろ?』

『あっ、うん‥』

『さっきから何だよ?俺に出来ることなら何でもするぞ』

その言葉に反応して、陽菜は俺を見た。

『本当!?』

『おう。その変わり、俺のお願いも聞いてくれるなら』

『お願いって?』

目を潤ませて俺を見てきた。
ダメだ‥子猫みたいなこの目に俺弱いんだった‥。この目を見たら俺が負ける‥
俺は陽菜から視線をずらし、近くに置いてあった雑誌を見た。

『俺のお願いはすぐに出来ることだよ。今すぐにでも。で、どうするんだ?』

『じゃあ‥私、龍二のお願いを聞く!!だから私のお願いも聞いて?』

『交渉成立だな』

陽菜は嬉しそうにスキップしながらソファーに飛び乗った。「俺の居場所は?あっ!!」陽菜が手招きしていた。もしかして‥俺の方がペットかも。


ここで一部訂正
ペット=俺。ご主人様=陽菜。


ソファーに座ると、陽菜は俺の肩に寄りかかってきた。

『ねぇ~龍二。明日って休みだよね?』

『おう。それがどうした?』

『うん。あのね‥‥明日、私とデート‥しない?』


‥はっ!?
意味が分からない。何でいきなりそんな事を言うんだ?俺ら‥同棲してるよな?毎日逢ってるよな?
俺の頭の中でカラスが鳴いていた。

『い、いいけど。でも、それって別にお願いすることでもなくね?今だってこうして一緒にいる訳だし。これからだって一緒にいるつもりだけど?』

『よかった。じゃあ決まりね!場所はこの部屋』

『‥‥‥』

俺の質問は無視ですか。それに、この部屋でデートって?一体何を考えているんだ‥‥でも、陽菜が楽しそうだから‥

「まっ、いっか」

俺はしばらく陽菜を見ていた。